先日隠岐諸島の中で唯一行ったことのなかった知夫里島に行ってきました。知夫里島は秘境の中の秘境と言われており、行ったことのある人は島根県民でも少ないと思います。
最初に行ったのは赤ハゲ山です。標高325mの知夫里島最高峰である赤ハゲ山展望台からはは西ノ島を見ることができました。この展望台の周囲は放牧地になっており、木は生えていません。ここは春になると野ダイコンのピンクの花が一面に咲くのだそうです。
このとき牛はいなかったのですが、人に慣れたタヌキがうろうろしていました。知夫里島には本土から連れてこられたタヌキが繁殖して、農作物へ多大な被害を与えているそうです。駆除しようにも動物愛護団体の圧力でできないのだとか。
こういう問題は日本各地で起こっていますね。どうせ駆除できないのなら、タヌキの島として観光の目玉にした方がいいかもしれません。タヌキ汁にしたらいい
かもと思ったのですが、臭くてまずいらしいですね(笑)。
さて、次は知夫里島最大の見所である赤壁(せきへき)に行ってみました。赤壁へ続く歩道には入口は牛が入れないようになっていました。ここは隠岐世界ジオパークのハイライトです。遊覧船に乗って海から赤壁を見ることもできるのだそうです。
昼食はホテル知夫の里のレストランで食べました。この島で食事をできるところはここを含めて2ヶ所しかないそうです。名物のサザエ天丼を食べてみたのですが、ちょっと微妙でした。もっとどっさりサザエが入っていたらいいのにと思いました。ここにはサザエカレーもあります。
知夫里島ではスギやヒノキの植林が行われていますが、広葉樹の大きな木を残して、その間に植えています。土が悪いのと放牧の影響を受けて木の生育は非常に悪そうでした。特にヒノキは牛の食害などでほとんど育っていないようです。
下の写真のようにヒノキの幼木が残っているところがありましたが、どれもトゲのあるツタのようなものが絡まっていて、おそらくはそのために牛が近づかなかったのではないかと思いました。
ここで私が思ったのはなぜヒノキを植えたのかということです。ヒノキは放牧牛に食べられたり踏まれたりしてうまく育たないというのは過去の林間放牧の知見では常識だと思っていました。
一方スギは牛がトゲを嫌うので成功事例が多いです。宮崎県諸塚村では実際に造林地の下刈りのために牛を利用しています。ただし、牛の密度管理だけは徹底しており、牛を過密にしないことがスギの幼木を守るカギとされています。
車で走っていたら我が物顔で牛が道をふさいでいました。この島で造林がうまくいかないのはやはり牛が過密になっているせいもあるのではないかと思います。牛の頭数と放牧地の分布や面積を調べて、適切な放牧管理の方法を提案できるのではないかと思いました。
ここでは牛はしばしば有刺鉄線の中で放牧されていましたが、宮崎県などでの近年の成功例を見る限り、電気牧柵というキーテクノロジーが効果を上げていま
す。電気牧柵を機動的に張り巡らせることで、牛の頭数管理の徹底にもつながるのです。牛はとても賢いので、一度電気牧柵に触れさせると学習効果が働き、二度と電気牧柵には近づこうとしなくなります。そのため電気が流れていなくても、牛は逃げないという話を聞いたこともあります。
この旅行を通して知夫里島の放牧管理が非常に重要だと思いました。このまま何も対策をせずにスギやヒノキを植えたところで成果は生まないだろうと思うのです。知夫里島はタヌキと牛と人と木の関係を考えたくなる島でした。
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