この記事では前の記事に続いて損益分岐点について理解を深めていきます。
下の図のように
売上高=変動費+固定費+利益
という式が成り立つことは明らかです。ここから経営分析が始まります。
固定費と利益の和を限界利益(あるいは貢献利益)と言います。つまり
限界利益=固定費+利益
限界利益=売上高-変動費
という式が成り立ちます。さらに、売上高に対する限界利益の比率を限界利益率と言います。つまり
限界利益率=限界利益÷売上高
となります。
経済学における限界利益の概念はどういうものなのかと言えば、売上高が1単位増加したときの利益の増分を意味しています。簡単に言うと、丸太を1本12,000円で仕入れて、それを柱にして1本20,000円で売るとき、限界利益は8,000円になります。このとき限界利益率は40%になります。限界利益は英語で「marginal profit」、限界利益率は「marginal profit ratio」というそうです。つまり、限界というのはmarginalの日本語訳なのですが、昔の人はなんと素敵な日本語訳をしたものなのだろうかと思われるのです。
さて、売上高に対する限界利益の比率が限界利益率でしたが、売上高に対する変動費の比率を変動費率と言います。
変動費率=変動費÷売上高
です。
それでは損益分岐点はどのようにして求められるでしょうか?最初に出てきた式(売上高=変動費+固定費+利益)において、利益がゼロのときの売上高が損益分岐点です。
売上高=変動費+固定費+利益
の式において、変動費=売上高×変動費率であるから
利益=売上高-売上高×変動費率-固定費
ここで利益=0、売上高=損益分岐点とすると
損益分岐点=固定費÷(1-変動費率)
となります。
それではここで問題です。以下のような年間生産量10,000m3の林業事業体の損益分岐点はいくらになるでしょうか?
売上高=10,000m3×10,000円/m3=100,000,000円
変動費=10,000m3×6,000円/m3 =60,000,000円
固定費=30,000,000円
利益=10,000,000円
その答えは以下の計算により、7,500万円ということになります。
30,000,000÷(1-0.6)=75,000,000円
こちらに損益分岐点グラフ診断というものがあったので、やってみました。確かに、損益分岐点は7,500万円になります。
この図にFM比率(75%)というものがありますが、固定費(fixed cost)の限界利益(marginal profit)に対する比率で、この比率が低ければ低いほど事業の収益構造が優れているということになります。例えば、FM比率が50%のときには1年分の固定費を回収するのに半年かかることを示しています。