2018年2月7日水曜日

架線集材の日欧コンセプト比較から我が国の架線集材技術の課題について考えてみた

 我が国では1990年代にヨーロッパのタワーヤーダをコピーした「タワー付き移動式集材機」が数多く開発されましたが、それらは林業現場に定着することなく、スイングヤーダに置き換えられていきました。当時の国産タワーヤーダは、移動式の車両にタワーとウインチを搭載しているというヨーロッパのタワーヤーダの形だけをコピーしたもので、そのコンセプトがどういうものなのかは十分に理解されていなかったと考えています。

 我が国の林業界に当時広く普及したリョウシンタワーヤーダですらヨーロッパのタワーヤーダの本質を理解して作られたものとは思えません。その最たる欠陥が今日までスイングヤーダに受け継がれているランニングスカイラインという索張りです。ランニングスカイラインはアメリカとノルウェーで普及した索張りです。アメリカでは枝分かれ型スラックプリング搬器により、ノルウェーでは同軸3室ドラム型搬器により、スキディングラインの巻き出し(荷掛けフックの強制降下)が可能になっています。

 一方、メインライン(ホールラインはほぼ和製英語のため、ここでは国際的に一般的な呼称であるメインラインと書きます)とホールバックラインの2線で構成される日本のランニングスカイラインの索張りは、名著として知られる「林業機械学」(大河原昭二編、文永堂出版)においてはイサアクセン式という名称が与えられています。この索張りはノルウェーにおいてトラクタの2胴ウインチを用いた簡易集材システムとして使われたもので、ランニングスカイラインの一種ではありますが、アメリカやノルウェーで一般的なランニングスカイラインと同一ではありません。スラックプリング機構が省略された簡易集材システムなので、下げ荷集材ではメインラインを斜面上方へ人力で引っ張る必要があり、荷掛手の労働負荷が大きくなって横取りは困難を極めます。特に、集材距離が長くなれば横取りはほぼ不可能になります。

図-1 イサクセン式(日本型ランニングスカイライン)の索張り

図-2 イサクセン式(日本型ランニングスカイライン)の搬器

図-3 ノルウェーの同軸3室ドラム型搬器

 我が国において、列状間伐などというガラパゴスな集材方法が流行った理由もこのイサアクセン式の索張りにあったものと思われます。下げ荷集材時の横取りが困難なのは先に述べた通りですが、上げ荷集材時にも搬器を着地させて横取りを行っていたので、いわゆる定性間伐では横取り時に残存木に対して衝突や損傷が生じて、生産性も全く上がらないという日本固有の問題が生じました。その問題に対する解決策として列状間伐は適切なものだったと考えています。

 一方、ヨーロッパの主索(スカイライン)・メインライン・ホールバックラインを使う3線式の索張りでは、定性間伐の横取りはそれほど困難なものではありませんでした。それは、スカイラインが太く係留装置があるので、横取り時の搬器の位置にほとんどぶれがなかったからと考えられます。荷掛けフックの強制降下が可能であるため荷掛手の労働負担が小さく、スカイラインと直角方向に集材木を横取り(最短経路で横取り)するという無理な作業をしないですむことも残存木の損傷が起きにくい理由だと考えています。ヨーロッパのタワーヤーダでは搬器を無線で操作し、元山と先山でコントロールの権限を交代するものがありますが、これを使うと荷掛手が目前で集材木を自在にコントロールできるので、残存木の損傷は発生しにくくなります。

図-4 左:残存木の損傷が発生しにくい横取り方向;右:残存木の損傷が予測される横取り方向

 さて、名著「林業機械学」にはイサアクセン式(日本型ランニングスカイライン)は上げ荷集材に適していると書かれているのですが(下げ荷集材に適していないのは確かですが)、これには重要な点が欠落していると指摘しておきたいです。上げ荷集材においても、メインラインとホールバックラインを同調させながら材を引き寄せますが、ホールバックラインが集材方向と逆向きの力(和製英語ならバックテンション)を絶えずかけていることから、現実には材を引き寄せる力が著しく制限されます。もう一点気になるのは、スイングヤーダのメーカーや機種にもよるのかもしれませんが、インターロックを使うと油圧を2つのドラムで消費するため、材を引き寄せる力が弱くなる現象が見られるということです。

 近年、大径化する材がスイングヤーダで引き上げられないという問題が顕著に起こっていますが、実はスイングヤーダのウインチの直引力からみたポテンシャルはそんなに低いわけではありません。実際に、スカイラインとメインラインで構成されるいわゆるスラックライン式(動滑車2倍型)の索張りで上げ荷集材をすると、0.25クラスのスイングヤーダで全木材がいとも簡単に引き上げられました。つまり、大径化する材への対応を困難にしているのはスイングヤーダの非力さではなく、インターロックを使うイサアクセン式の索張りが大きいのではないかと考えられます。

図-5 スラックライン式(動滑車2倍型)

 日本とヨーロッパの山岳地における地形の違いにも着目する必要があります。ヨーロッパの地形が真っ直ぐであるのに対して、日本の地形はしわやひだが多数見られます。それゆえ、日本の山岳地を車で走ると谷と尾根を次々に横切ることになりますが、ヨーロッパではそういうことはあまりありません。確認のために、日本の島根県の山間部とオーストリア中央の山間部のGoogleマップの写真を比べてみていただきたいです。そして重要なことは、日本とヨーロッパの索張りはそれぞれの地形に合わせて発展してきたということです。


図-6 島根県の山間部


図-7 オーストリア中央の山間部

 例えば、日本の集材機で典型的な索張りであるエンドレスタイラー式ですが、その主索はしばしば谷筋に張られます。お椀状になった小流域の谷筋に主索を張ると地面とのクリアランスが確保できるため、集材作業には非常に有利になります。なぜクリアランスが確保できるのかと言えば、谷頭は侵食前線なので斜面が急に落ち込んでいるからで、実際に地形図の等高線を見てもこのような遷急線が随所に確認できると思います。

図-8 エンドレスタイラー式の索張り

図-9 谷頭の遷急線により地面とのクリアランスを確保

 このように主索を谷筋に張った場合、荷掛手はしばしば横取り時に荷掛けフックを持って斜面を上る必要が生じます。しかも、谷の幅が広くなる中央部ではその歩行距離も長くなります。搬器に強制降下を行う仕組みがないため、荷掛けフックの重量も大きなものになります。そこで、我が国の伝統的な索張り技術ではエンドレスタイラー式に見られるように、ホールバックラインによる動力引込み型の架線技術が重宝されたのだろうと考えられます。

図-10 谷の幅によって横取り距離が変化

 一方、タワーヤーダが主流のヨーロッパの索張りは林道に沿って一定の幅ごとに搬出を行うというものです。主索の左右30mの幅で搬出を行うならば、60m間隔で張り替えを行うことになります。このような集材方法を尾根や谷が入り乱れる日本の山岳地で行うと、横取り時に荷掛手や集材木が尾根や谷を越えなければならない状況が発生するため合理的とは言えません。我が国においてかつてタワーヤーダの導入に失敗した理由には、このような地形要因があったことは、今まで見落とされていたのではないかと思っています。

図-11 一定間隔で張り替えを行うタワーヤーダによる集材

 ヨーロッパでは、日本の伝統的な索張り技術と違って谷筋に主索を張るわけではないので、地面とのクリアランスを確保するために中間サポートが不可欠となっています。短距離集材が主流の我が国のスイングヤーダとは違って、中距離集材が主流であるため、途中で生じる地面の傾斜変換に対しても中間サポートで対応します。ヨーロッパのタワーヤーダを導入するとほぼもれなく中間サポートが付属していますが、我が国において谷地形を巧みに利用して主索を張ることができるならば、その必要性は低いとも言えます。我が国におけるタワーヤーダの索張りは、むしろ谷筋に張った方がよいとも言えるでしょう。

図-12 中間サポートが不可欠なヨーロッパの中距離集材

 日本とヨーロッパの架線集材の基本コンセプトにはまだまだ多くの違いがあります。例えば、ヨーロッパでは重力を最大限に活用した高速かつ省エネな集材技術が伝統的に存在していますが、我が国では重力を味方にするという考えは希薄だったのではないかと思っています。スイスのWyssen社の伝統的集材システムは単胴ウインチを山の上に配置して材を空中に吊り下げて重力で高速な下げ荷集材を行うことで知られています。現代ヨーロッパのタワーヤーダによる上げ荷集材でも重力によって搬器を超高速で先山に送り出しています。

図-13 Wyssen集材機の索張り図(出典:https://www.wyssenseilbahnen.com/wp-content/uploads/2017/09/jp-hauptprospekt-2017.pdf)

 ヨーロッパの重力を使った下げ荷集材の中でも、イタリアのSeik社の集材システムは、移動式集材機を(Wyssen社のように山の上ではなく)麓に配置して、主索・メインライン・ホールバックラインで洗練された下げ荷集材を実現しています。図-14~17の写真は、スイスで行われていた下げ荷集材の作業風景です。(これらの写真は京都大学・長谷川尚史先生にご提供いただきました。)

図-14 長距離の下げ荷集材の索張り

図-15 移動式集材機(屋根付きで便利)のLUX 1800

図-16 Seik社の搬器SFM 30/60


図-17 元柱は移動式の人工支柱

 重力を利用することは自動車業界で近年急速に進化している電動化でも非常に有利になります。搬器の降下時に蓄電を行う動力回生装置を使えば燃料補給のコストや手間が削減できて、エネルギー・環境・労働負担の観点でも優れた集材作業が実現できるからです。

 ヨーロッパで効率のよい中長距離集材が実現できているのは重力を最大限に利用して集材を行っているからですが、我が国の国産タワーヤーダはゆっくりとしたスピードでしか搬器を送り出せないのにドラムの容量だけはヨーロッパ並であったりとちぐはぐなスペックでした。スイングヤーダにおいても重力による搬器の高速な送り出しが望めない日本型ランニングスカイライン(イサクセン式)がメーカーのデフォルトであり、それゆえに生産性の向上が実現できていません。

 我が国の林業界に広く普及しているスイングヤーダの生産性を飛躍的に高めて、欧州のタワーヤーダの8割の生産性を実現するために何をすべきか、ようやく答えが見えてきたと思います。ヨーロッパで主流の係留装置のある搬器が存在しないに等しい我が国において今できることは、上げ荷集材においては、スラックライン式(動滑車2倍型)、下げ荷集材においてはフォーリングブロック式を用いることです。スラックライン式(動滑車2倍型)の搬器は自作も容易です。フォーリングブロック式では主索に加えて、メインラインとホールバックラインが必要となるため、2胴ドラムが標準のスイングヤーダでは主索を立木間に張らなくてはならないのが弱点です。

 図-18 ターンバックルで自作したスラックライン式(動滑車2倍型)用の搬器


図-19 フォーリングブロック式

 機械開発においては、無線操作の係留装置を備えた搬器の開発が必要です。スイングヤーダの3ドラム化(主索・メインライン・ホールバックラインに対応)によってヨーロッパと同様の重力を使った索張りが実現できれば、日本林業は生産性においてヨーロッパと互角に勝負できる可能性があります。中長期的には、ランニングスカイラインと決別した新たな国産タワーヤーダの開発が不可欠でしょう。ヨーロッパのタワーヤーダは高性能ですが、輸入業者がマージンを取っているため国内価格が高く、それではヨーロッパの林業と前提条件で負けてしまうからです。

 我が国の林業界では、新たな林業機械を導入しようにも、選択肢はほとんどない状況が長期に渡って続いています。林業現場が必要とする林業機械が作られていないのです。林野庁の予算で新規開発された林業機械は、必要性の観点では例外なく「外れ」で、油圧式集材機とか自走式搬器とかグラップル搬器といったものをいったい誰が必要としているのだろうかと疑問に思っています。日本の中小企業には高度な技術の蓄積があるので、作ろうと思えば何だって作れるのに、作るものを間違っているというのが問題です。

 最後に、定性間伐の下げ荷集材については、最新鋭のヨーロッパのタワーヤーダをもってしても急傾斜地となると容易ではありません。その対策として、H型架線や三角架線で知られる平面型架線の活用が考えられます。次世代の平面型架線のアイディアについては、また改めて報告したいと思っています。

2017年8月9日水曜日

蟻地獄へようこそ!高性能林業機械を買ったら赤字が増える理由

閉店前のスーパーマーケットに行って、食べたかったお刺身が半額になっていたら喜んで買ってしまいますが、高性能林業機械も補助金で半額セールが行われています。日本の高性能林業機械がこれだけ普及したのは補助金があったからと考えて間違いないでしょう。高性能林業機械の3点セット(スイングヤーダ、プロセッサ、フォワーダ)が半額で買えたらいい買い物ができたと思ってしまいますが、その後いくら頑張っても林業経営が好転することはなく、どうして利益が出ないのだろうかと首をかしげることになります。気づいたときは時すでに遅しで、蟻地獄へ足を踏み入れてしまっているのです。こうなってしまったら毎日手足を動かしていないと(機械をフル稼働させて仕事を続けていないと)蟻地獄の底に落ちて経営破綻してしまいます。

それでは、これから高性能林業機械の蟻地獄の実態を計算によって解き明かしていきましょう。この検証作業には林野庁が無料公開している「森林総合監理士(フォレスター)基本テキスト」のデータを一部使わせていただいています。

さて、表-1は高性能林業機械3点セット(補助率50%で購入)の直接事業費ですが、これによると年間2826.5万円の費用が発生することがわかります。これらの機械を使って作業を行うとどのくらい利益は出るのかについて、これから計算していきます。

表-1 高性能林業機械の直接事業費

表-2は高性能林業機械3点セットの機械を使った場合の標準的な生産性と機械稼働率と作業員数を示しています。これらの数値はシステム生産性(3台の機械を連携させた作業の生産性)を計算するのに必要な前提条件です。

表-2 高性能林業機械3点セットの標準的な稼働条件

システム生産性については「機械化のマネジメント」(全国林業改良普及協会発行)に書かれていますが、重要な考え方なので、ここでもまとめておくことにします。

図-1は林業機械の連携作業の基本形となる「完全直列作業」の流れです。伐倒が終わったら集材作業を開始し、それが終わると造材作業に移るという流れになっています。伐倒・集材・造材作業を並列的に行わないため、全体の集材効率(システム生産性)は非常に低くなっています。

図-1 完全直列作業の流れ(文字の説明は図-4)

図-2は伐倒・集材・造材作業の一部を並列的に行う並列作業の流れです。このように複数の作業を同時に行うことによってシステム生産性を高めることが可能になり、同時作業は林業機械の連携作業において生産性改善の王道と言えるものです。

 図-2 並列作業の流れ(文字の説明は図-4)

図-3は伐倒・集材・造材作業を完全に並列的に完全並列作業の流れです。この場合にシステム生産性は最大になりますが、これはシステム生産性の理論的な最大値と考えてよいでしょう。

図-3 完全並列作業の流れ(文字の説明は図-4)

図-4 変数の説明

図-5は完全直列作業時のシステム生産性の計算式です。1㎥の木を伐倒・集材・造材するのに要する時間はそれぞれ1/PA、1/PB、1/PCなので、システム生産性P0はこのような式(材積/全作業の生産時間)で計算されることになります。

図-5 完全直列作業時のシステム生産性の計算式

図-6は並列作業時のシステム生産性の計算式です。TA、TB、TCは完全直列作業時も並列作業時も変わらないことから、図-7のように式を変形することにより、システム生産性PSは計算されることになります。

 図-6 並列作業時のシステム生産性の計算式

図-7 並列作業時のシステム生産性の計算方法

表-3は高性能林業機械3点セットのシステム生産性、労働生産量、年間生産量を求めたものですが、システム生産性は1.8㎥/hから3.5㎥/hの間で変化しています。実際のところ、その変化はあまり大きくなく、連携作業をいくら頑張っても高が知れており、その最大値は結局スイングヤーダの生産性に一致することがわかります。

表-3 高性能林業機械の3点セットのシステム生産性、労働生産量、年間生産量

この表によると、年間生産量は1,629.3~3,150㎥しかなく、1㎥あたり10,000円としても売上は1,629.3~3,150万円しかありません。これでは表-1の直接事業費を賄うのが精一杯で、事務所経費などの間接事業費はほとんど出せないので、事業としては確実に赤字になってしまいます。これこそが高性能林業機械の3点セットを導入しても利益が出ない事業構造であり、「はたらけど はたらけど猶 わが生活楽にならざり ぢつと手を見る」利益なき蟻地獄に陥ってしまうのです。

私が「スイングヤーダをどげんかせんといかん」といつも言っているのは、スイングヤーダの生産性を改善することなくしてシステム生産性は上がらないからですが、スイングヤーダの代わりにグラップルによる車両系集材を行うことで一部の事業体が利益を出していることは希望の光であると言えます。そこで、グラップル集材を行ったものと仮定してスイングヤーダの生産性を7.0㎥/hと2倍にして計算してみました(表-4)。

表-4 グラップル集材時の標準的な稼働条件

表-5によると、グラップル集材によって年間生産量を最大5,400㎥まで増やすことが可能になり、売上は5,400万円にまで増加します。これによって、事務所経費などの間接事業費も賄えるようになる可能性が見えてきます。つまり、スイングヤーダをなんとかすれば赤字にはならない程度に利益が出せるということです。

表-5 グラップル集材時のシステム生産性、労働生産量、年間生産量

さて、ヨーロッパのコンビネーション型タワーヤーダ(図-8)は、スイングヤーダが行っている集材作業とプロセッサが行っている造材作業を同時に行い、グラップルローダーを搭載したトラックで直接材を運び出すので、フォワーダ運搬をする必要がありません。機械の連携を増やすとシステム生産性は下がる一方ですが、この場合システム生産性を計算する必要もありません。

図-8 Mayr-Melmhofのコンビネーション型タワーヤーダSyncrofalke(出典:http://www.mm-forsttechnik.at/de/syncrofalke/performance.php)

このコンビネーション型タワーヤーダの直接事業費を試算したものが表-6になります。これによると、コンビネーション型タワーヤーダを8,000円と見積もっているのに、直接事業費は高性能林業機械3点セットの場合(表-1)よりもむしろ低くなっています。

表-6 コンビネーション型タワーヤーダの直接事業費

この表からわかることは、コンビネーション型タワーヤーダでは2人作業が可能になることで人件費が半分になる効果が非常に大きいということです。日本の高性能林業機械3点セットの問題は、機械価格だけでなく人件費も同時に高くなって、直接事業費を大幅に押し上げています。8,000万円の林業機械は高くて償却できないと思っている人も多いでしょうが、実は直接事業費は高性能林業機械3点セットの方が高いことにも注目してもらいたいです。

表-7はコンビネーション型タワーヤーダを使った場合の標準的な生産性と機械稼働率と作業員数で、これに基づいてシステム生産性、労働生産性、年間生産量を計算したものが表-8になります。コンビネーション型タワーヤーダはなんと年間13,500㎥の材を生産でき、1億3,500万円の売上を見込むことができます。つまり、直接事業費は高性能林業機械以下であるのに、売上高はその何倍にもなるのです。これでは日本の高性能林業機械は全く太刀打ちできません。

表-7 コンビネーション型タワーヤーダの標準的な稼働条件

表-8 コンビネーション型タワーヤーダのシステム生産性、労働生産量、年間生産量

ヨーロッパには高規格な林道があるけれども、日本にはそういう林道がないからコンビネーション型タワーヤーダは使えないという主張は正しいです。しかし、ヨーロッパの林道網も一夜にしてできたわけでなく、長い年月をかけて社会資本として蓄積されてきたものです。林道網の構築には時間軸を考える必要があり、どれだけお金を投入しても一朝一夕にはできません。「ローマは一日にして成らず」なのです。

それなのに、現代の日本林業は使い捨ての作業道に補助金がばらまかれ、林道という社会資本の蓄積をほとんど放棄しているように見えます。これでは10年後も、20年後も、30年後もヨーロッパの林業と勝負することはできません。それではいつから林道の整備を始めればよいのでしょうか?「今でしょ!」がその答えです。

2017年6月25日日曜日

「林道」「林業専用道」「森林作業道」の中で必要のないものはどれか?

平成21年度 森林・林業白書」によると、日本の林内路網密度は17m/ha(林道等13m/ha、作業道等4m/ha)で、オーストリアの89m/ha(林道等45m/ha、作業道等44m/ha)、ドイツの118m/ha(林道等54m/ha、作業道等64m/ha)に比べて大きく劣っています。ヨーロッパのタワーヤーダがどんなに機能的に優秀でも、それを使うための道がなければ使えないというのが現実で、日本でタワーヤーダが普及しなかったのは林道がなかったからというのも大きな要因です。

これまで林道はたくさん作ってきたはずですが、それらはいったいどこに行ってしまったのか?と疑問に思ってしまうほど現実に山には使える林道がありません。一方で、山間部には当初は林道として開設されたけれども、今ではアスファルトで舗装され、ガードレールが取り付けられて、一般車両がふつうに走っている「公道」が存在しています。それには、林道予算を活用して山間部の自治体が生活に必要な道路整備を行ってきた背景があるわけですが、公道に「格上げ」された林道は森林作業を行うには使いにくい(使えない)道になってしまいました。

なぜなら、谷側にはガードレール、山側にもコンクリートの擁壁があるため道から林内への進入や索張りが制限されます。舗装された公道をクローラ車は走れないし、一般車両の交通を遮断するような集材作業もできなくなります。そもそも、公道と林道とは求められる要件が異なりますが、両方を同時に追い求めてきたことが失敗だったと言えるでしょう。

その要件がどういうものかと言えば、林道は必ずしも2点間を最短距離で直線的に結ぶ必要はないので大規模なトンネルや橋梁は必要としないし、林地との接続を分断するガードレールや擁壁は邪魔なだけだし、カーブミラーや標識もなくてもよいし、舗装の必要性もきわめて局所的かつ限定的です。公道は集落間をできるだけ直線で(最短距離で)連結する必要があり、ドライバーの運転技量も様々で必然的に交通量も多くなるので、安全性に対する要求水準が非常に高くなります。ほとんどの一般車両はオフロード走行を前提としていないし、移動の快適性や走行性を考えれば、路面に舗装が必要なのは言うまでもありません。

日本の林道整備を担っていた(森林開発公団→緑資源公団→)緑資源機構が公共事業に対する強い逆風が吹く中談合事件で解体され、日本の林道整備はどうなるのかと懸念されていたところで「森林・林業再生プラン」が発表されて、「林業専用道」という新たな林道区分が打ち出されました。林業専用道の位置付けは、近畿中国森林管理局によると以下のようなもので、林道と森林作業道の間を補完するものになっています。

林道・・・・・・・・・・・・原則として不特定多数の人が利用する恒久的公共施設であり、森林整備や木材生産を進める上での幹線となるもの。

林業専用道・・・・主として特定の者が森林施業のために利用する恒久的公共施設であり、幹線となる林道を補完し、森林作業道と組み合わせて、森林施業の用に供する道をいい、普通自動車(10トン積程度のトラック)や林業用車両(大型ホイールタイプフォワーダ等)の輸送能力に応じた必要最小限の規格・構造を持つことにより、森林作業道の機能を木材輸送の観点から強化・補完するものである。

森林作業道・・・・特定の者が森林施業のために利用するものであり、主として林業機械(2トン積程度の小型トラックを含む。)の走行を予定するものである。また、集材等のために、より高密度な配置が必要となる道であり、作設に当たっては、経済性を確保しつつ丈夫で簡易な構造とすることが特に求められる。

林内路網・・・・・・・林道、林業専用道、森林作業道等、場合によっては公道等を含む道の総称である。


図-1 林業専用道と森林作業道のイメージ図(出典:http://www.rinya.maff.go.jp/kinki/seibi/romou_seibi/1_.html)
 
日本林業の生産現場の課題に、フォワーダから山土場で3トントラックへ積み替え、さらに中間土場で10トントラックに積み替えることで2度の積み替えが発生しているということがあります。作業道とクローラ型フォワーダを組み合わせた日本のガラパゴスシステムは生産性の観点では決してお勧めできないのですが、ヨーロッパ並の林内路網がすぐに整備できるわけではないし、生産現場にようやく根付き始めてきた方法を急激に変えることも無理な状況で、どうやって現状を改善していくか現実的な答えを出さなければなりません。その答えとなる林業専用道がどういう意味を持つのかおさらいしておきましょう。

図-2は高性能林業機械を導入した現場で見られる日本林業の典型的な材の輸送システムですが、クローラ型フォワーダで搬出した材を幅の狭い公道との接続部にある山土場で3トントラックに積み替え中間土場まで運搬し、そこで10トントラックに積み替えるというものです。この場合、2度の積み替えが発生します。

図-2 日本の典型的な材の輸送システム

そこで、作業道を中間土場のある幅の広い公道に接続したのが図-3です。これによって材はクローラ型フォワーダから10トントラックへ直接の積み替えが可能になります。しかし、走行速度の遅いクローラ型フォワーダによる運搬距離が伸びることで生産性が大きく低下します。作業道の開設費や開設時間も余分に必要になります。

図-3 フォワーダによる材の運搬距離が長い林内路網

図-4は広い公道から山土場まで林業専用道で山の中腹をぶち抜いたものです。これならば、クローラ型フォワーダから10トントラックへ直接の積み替えが可能になるばかりでなく、クローラ型フォワーダによる運搬距離が伸びることもありません。山の中腹から上下方向に作業道でアクセスできるので、クローラ型フォワーダによる運搬距離はさらに短縮されます。このような道ができることで、ヨーロッパの高性能なタワーヤーダの利用も可能になり、林業専用道の上下方向に索張りをすることで広範囲の集材をすることも、10トントラックを直付けして積み替えずに輸送することも可能になります。

図-4 林業専用道を導入した林内路網

国土が広大なアメリカでは材を数百キロ離れた場所まで運搬することもふつうであり、輸送効率が生産コストに直結しています。それゆえに、現地の学会に参加すると大型トレーラーがトピックになることしばしばですが、森林利用学会の研究発表会ではあまり議論されていないのではないかと思います。(時々北海道の話が出てくるのは、やはり北海道が広くて輸送の効率性が課題になっているから?)

写真1~7はカリフォルニア州北部のスイングヤーダによる集材現場からトレーラーが材を運び出す一連の作業の様子です。アメリカに行くといつも日本の林業との規模の違いに圧倒されますが、林業ビジネスとしての本質に差異はなく、大きな運搬車で効率よく材を運んだ方が有利になるのはアメリカも日本も同じです。日本の林業関係者はもっと材の輸送のこと(そして流通のこと)を考えるべきです。

写真-1 スイングヤーダによる集材作業

写真-2 方向転換中のトレーラー

 写真-3 グラップルで後輪を持ち上げ

写真-4 後輪を連結して完成

写真-5 グラップルによる材の積み込み

写真-6 前方から見た積み込み中のトレーラー

写真-7 材を満載して出発するトレーラー

ここで、物流の合理化で先行するイオンの事例を見てみましょう。松江にあるイオンのスーパーマーケットに富山県産の魚(や刺身)が売られていたりすると、なぜ富山県の港に水揚げされた魚をわざわざトラックで(魚の豊富な)山陰まで運んで来るのだろうか、どうしてそれで利益が出るのだろうかと考えさせられます。それはもちろん魚の重量当たりの付加価値が大きく、トラックによる輸送コストが相対的に小さいことが大きいでしょう。一方、木材は体積や重量当たりの利益が魚に比べればわずかしかないので、トラック輸送にコストがかかればすぐに赤字になってしまいます。生鮮食品は鮮度の維持の観点から地産地消が有利になりますが、木材もまた輸送コストの観点から地産地消に優位性があると言えるでしょう。輸送の観点では、国産材は外材に比べて圧倒的に有利な条件にあるのだから、外材との競争では地の利を最大限に生かしたビジネス展開が必要であり、そのための林業専用道とも言えそうです。

写真-8 イオンの刺身(出典:https://www.aeonnetshop.com/shop/goods/goods.aspx?goods=120000000615002751271000000)
 
これまで曖昧になっていた林道と公道の役割分担を明確にした林業専用道への期待は大きいのですが、現実にはその開設の動きはとても鈍いように見えます。その理由をいくつかの林業現場で尋ねたところ、人も資金も技術も余裕もない森林組合にはこういう比較的大規模な道を作るのは荷が重いという話が聞こえてきました。林業専用道の事業主体は都道府県、市町村、森林組合等とされていますが、林業専用道は行政が責任を持って地域のニーズに基づき長期的な視点で計画的に開設し、森林組合は森林作業道の開設のみを担うという役割分担が必要ではないかと思っています。

森林利用学会にはかつてモノレールを含めた複合規格路網という話題もありましたが、そもそも林道には多くの規格が必要なのでしょうか?川上は流量が少ないので道も小さく、川下は流量が大きくなるので道も大きくという考え方で、複数の規格の林道を合理的に組み合わせるという考え方が今でもスタンダードだと思われますが、材を輸送する車両の「流量」は一般の交通量に比べてとても少ないので、川下と言えども大規模林道、スーパー林道、緑資源幹線林道、森林基幹道のような道は必要ではありません。むしろ、林道の規格が小さいものから大きいものへと変化する中で、材をより大型の車両に積み替えるコストが問題になっていることを考えると、林道の規格は思い切って整理してしまってもよいはずです。

現状の林道区分の中では、(原則として不特定多数の人が利用する恒久的公共施設であり、森林整備や木材生産を進める上での幹線となる)「林道」という区分はもはや必要ないと考えています。つまり、林道として必要なのは林業専用道と森林作業道の2つの規格であり、山間部の集落間を連結する道や観光に資する道は林道としては廃止して、林道と公道の役割分担を明確にすべきということです。それによって、林業専用道への集中投資を実現して、その開設を加速していく必要があると考えます。

2017年5月16日火曜日

高性能林業機械と作業道の「4点セット」をどげんかせんといかん

山地に作業道を開設して、スイングヤーダ、プロセッサ(ハーベスタ含む)、フォワーダという高性能林業機械の3点セットを使って集材する方法が我が国の林業界のスタンダードになっていますが、これは日本でしか見られないガラパゴスシステムです。林野庁が近年推進してきた森林作業に関する二大政策は「高性能林業機械の導入」と「作業道の開設」であったと思っていますが、実はこれらのミスマッチこそが日本林業の生産性が向上しない主たる原因と考えています。

スイングヤーダは森林組合に多く導入されていますが、搬器を使った索張りを避けて単線直引きによる集材作業が広く行われています。このような原始的な方法では集材効率は上がるわけがないのですが、比較的小面積の事業地では道からの距離が20~30m程度といった現場も多く、搬器を使った索張りをしなくても単線直引きで引っ張り出した方が早いと考えるのは間違っているようには思えませんが、実際のところどうなのでしょうか?

作業道上のスイングヤーダで単線直引きによる上げ荷集材を行う場合、材を道下まで寄せることはできるものの道上まで引き上げることはできません。そのため、この材をプロセッサに受け渡す次のプロセスは困難を極めることになります。長伐期化により大径材や長材が一般的になっていますが、このような材を直角に回して作業道上へ引き上げようとすれば残存木への衝突や損傷が避けられません。材を回せない場合はチェーンソーで玉切りするという余計かつ危険な作業が発生します。作業道が狭いと.25クラスのグラップルやプロセッサしか入れないため、そうなると機械の力不足によりこのようなチェーンソー作業は必然となってきます。その後なんとかプロセッサが材を掴むことができたとしても作業道は狭いので、ブームを振り回して枝払い・玉切りと言った造材作業を行うことは非常に困難です。この問題は単線直引きに限らず、作業道上でスイングヤーダ(あるいはウインチ)を使った列状間伐のような多点型集材を行えばほとんどの場合に発生します。

図-1 作業道上でウインチを用いた単線直引きによる上げ荷集材作業

一方、ヨーロッパのタワーヤーダは最大横取距離までの集材を終えた後、林道上を移動して隣の伐区で再び同様の集材作業を行います。タワーヤーダがこのような短時間の張り替えによる多点型集材を得意としていることは今さら言うまでもないことです。ヨーロッパのタワーヤーダは幅員4mはある幅の広い林道上で作業を行うため、ブームを振り回すプロセッサによる造材作業にも支障はありません。ヨーロッパで広く普及しているKONRAD社のWOODYシリーズ(ハーベスタ)であれば、ローラーによる送材力が大きいため、道端の材をいとも簡単に引き上げることができます。

図-2 ヨーロッパで普及しているWOODYハーベスタ
(出典:http://www.forsttechnik.at/en/products/woody-harvester.html)

さらには、コンビネーション型タワーヤーダを使えば集材作業の最難関とも言えるタワーヤーダからプロセッサへの材の受け渡しは最大レベルでスムーズに行われます。ヨーロッパにおいて集材作業の一連のプロセスが合理的に最適化されていることにあらためて深い感動を覚えます。

 図-3 コンビネーション型タワーヤーダSyncrofalke
(出典:http://www.mm-forsttechnik.at/de/syncrofalke/performance.php)

日本のスイングヤーダはヨーロッパのタワーヤーダを模した多用途型の林業機械ですが、作業道が狭いのでヨーロッパのタワーヤーダのように林道上を移動しながら次々に張り替える多点型作業には不向きであることはすでに述べた通りです。日本のスイングヤーダは他の多くの林業機械と同様にヨーロッパの林業機械の「亜種」なのですが、この点においてもヨーロッパのタワーヤーダ技術の本質を理解せずに外形だけをコピーして失敗していると言えるでしょう。

さて、日本のスイングヤーダの生産性が思うように上がらない一方で、昔ながらの集材機による集材作業の生産性が高くコストも低いのはなぜなのか考えさせられますが、これは集材機の性能が高くて優れているというわけではありません。近年集材機を見直そうという機運が林業界にありますが、集材機は時代遅れの過去の遺物でしかないので、その必要は全くありません。集材機が優れているのは、低い機械コストと索張りです。索張りと言ってもエンドレスタイラーが優れているとわけではもちろんありません。それでは何が優れているのかと言えば、まとまった量の材が一点に集中して出てくるということです。これは、先に述べたようなスイングヤーダによる多点型集材で作業道に沿って道端に少量の材がばらばらに出てくるのとは対照的と言えるでしょう。

材が一点に集中して出てくることでどのようなメリットが生まれるのかと言えば、そこに広い土場を作っておくことでプロセッサによる造材、材の集積・仕分け、そしてトラックへの積み込みという一連のプロセスがスムーズに進行することです。残材などバイオマスの収穫にも有利です。これこそが高性能林業機械の3点セットに作業道を加えた4点セットが苦手とするところであり、集材機作業に優位性があると言えます。この土場を大型トラックが走行できる公道のそばに作れば、材の輸送コストも大幅に圧縮できます。

このような一点集中型の方式はスイングヤーダの集材作業でも大いに採用を検討すべきで、フォーリングブロックなどの索張りを使ってみてはどうかと考えています。タワーヤーダであれば、この方式によっていっそう効率のよい集材作業が可能になるでしょう。この場合、公道そばにある土場までの下げ荷集材が後の運材プロセスへの連続性の観点から有利です。2013年に島根県浜田市で開催された森林利用学会の現地見学会で行われていたのは、まさにそういう作業でした。

図-4 IHIのタワーヤーダによる下げ荷集材

図-5 運材プロセスにスムーズに接続する下げ荷集材が有利

一方、4点セットではフォワーダが間に入るので、集材機に比べると材の輸送コストが非常に高くなるという問題が生じます。フォワーダは走行速度が遅く、積載量も少なく、メンテナンスコストが高く、実は事故も多発しているといった問題が知られていますが、ここでは4点セットの課題となっている作業の連続性について考えてみます。

図-6 フォワーダによる積み込み作業

多くの作業道には運材トラックが入れないため、クローラ式のフォワーダが使われますが、この場合トラックへの材の積み替え作業が発生します。輸送プロセスに積み替えという断絶が生じるという意味において、フォワーダというのは現代の森林鉄道とも言えます。森林鉄道は輸送プロセスに断絶のないトラックに合理的に置き換わってきたのに、今また作業道という「線路」を敷いてフォワーダという道路を走れない「貨車」を導入することで時代が逆戻りしているようにも思われるのです。

クローラ式のフォワーダは舗装された公道を走れないので、作業道入口の土場が3トントラックしか入れない公道に接続していた場合、そこで材を3トントラックに積み替えて広い公道に面した土場まで運搬し、そこで再び15トントラックに積み替えて出荷するという運搬システムも実際に行われています。こういう方法は、運材トラックが集材現場まで直接進入して材を運び出すヨーロッパに比べて明らかに効率が悪く、高コストであると言えます。日本林業は生産性が低い割に現場に機械が多過ぎる(機械が多過ぎるから生産性が低い)という指摘があり、フォワーダをなくした方がそれ自体のコストを含めて有利になります。

最後は日本の作業道についてです。森林組合が開設する作業道に対して行政が2,000円/m程度の補助金を出すので、現場は足が出ないように2,000円/m以下のコストで作業道を作ろうとします。そうして作られた作業道はフォワーダ限定の道で幅はぎりぎりで排水処理なども十分ではなく、一時的な使用を想定した道なので森林生産のための生産基盤(林道網)とはなりえません。わずかな材を搬出するために山を切り刻んで新たな崩壊要因(災害要因)を作ることは決して合理的とは言えないでしょう。

図-7 スリップ防止のために枝条を敷いた作業道

補助金というのは本来国際競争力の低い日本林業を産業として強化するための後押しに使われるべきものなのに、現実には作業道を名目にしたばらまきとなって森林組合の経営努力や自助努力、そして自立そのものを阻害しています。使い捨ての道のために補助金を出すのではなく、生産基盤となる恒久的な道に出して欲しいと願わずにはいられないです。

高性能林業機械と作業道の4点セットに熱狂しながら、これまで日本の林業機械化は進んできましたが、生産性が思うように上がらなかった現実を受け入れ、これまで何が間違っていたのかを考え総括する必要があります。その答えは日本とヨーロッパの林業機械化を多面的に比較することで見えてくるでしょう。そしてもう一点、作業道に対する勘違いが日本の林業現場に蔓延しているようなので、それが本来どういうものだったのか、「写真図解 作業道づくり」(大橋慶三郎・岡橋清元著、全国林業改良普及協会発行)あたりを読んで再確認してもらいたいと思っています。